2024年8月18日 (日本時間)
スーパーミドル級10回戦(76.20キロ以下)
セルゲイ・デレフヤンチェンコ(WBC同級6位)VSクリスチャン・エンビリ(WBC同級1位)
開催地: カナダ
配信: U-NEXT
ボクシング界きっての無冠の帝王デレフヤンチェンコ。いや善戦マンと言ったほうがしっくりくるか。この選手はとにかく報われない。
あと一歩のところで世界王座を逃し続け今年で39歳。もうスター候補の踏み台にされるのは懲り懲りだ。勢いのあるエンビリを返り討ちにし、引退までにもう1度世界挑戦をしたいところ。
対するクリスチャン・エンビリだか、恥ずかしながら最近まで知らなかった。着実に地域タイトルを獲得し、主要四団体すべてでランキング3位以内に入っている。
29歳とプロスペクトというよりは脂の乗り切った一番良い状態だろう。エンビリとしては難敵デレフヤンチェンコを圧倒し、カネロにアピールしたいところ。
選手情報
セルゲイ・デレフヤンチェンコ
生年月日: 1985年10月31日 (38歳)
国籍: ウクライナ
異名: テクニシャン
アマチュア戦績: 390勝20敗
2007年世界ボクシング選手権ミドル級 銅メダル
2008年北京五輪出場 2回戦で敗退
プロ戦績: 20戦15勝(10KO)5敗
身長175cm・リーチ171cm・オーソドックス
過去の対戦相手: ダニエル・ジェイコブス(⚫️判定1-2)、ゲンナジー・ゴロフキン(⚫️判定0-3)、ジャモール・チャーロ(⚫️判定0-3)、カルロス・アダメス(⚫️判定0-2)、ハイメ・ムンギア(⚫️判定0-3)
ファイトスタイル
異名はテクニシャンだが、インファイトを好む激闘型ファイターである。
シャープなジャブを基調とし、フック・アッパー・ボディーとあらゆる角度から多彩なコンビネーションを打ち込む。スタミナも十分で手数は最後まで落ちない。
ステップワークの技術が高く、頻繁にサイドに回り込みながらパンチを打ち込む姿は同郷のロマチェンコと重なる。
ディフェンスはやや甘い。ダウンもちょくちょくする。だが回復力に優れているため、KO負けはない。
クリスチャン・エンビリ
生年月日: 1995年4月26日 (29歳)
国籍: フランス
アマチュア戦績: 47勝10敗
2016年リオデジャネイロ五輪出場 準々決勝で敗退(金メダルを獲得したアルレン・ロペスに敗れる)
プロ戦績: 27戦全勝(23KO)
WBCアメリカ大陸スーパーミドル級王座 防衛7
WBAインターナショナルスーパーミドル急王座 防衛3
身長174cm ・リーチ183cm ・オーソドックス
過去の対戦相手: 有名な相手はおらず
ファイトスタイル
まだ骨のある相手とは対戦してないが、パンチの破壊力はスーパーミドル級でNo.1だろう。
ファイトスタイルは単純明快。とにかく前進して強打を振り回す。テクニックや作戦などは皆無。インファイトで殴り倒すのみ。
嵐のような連打を浴びせる姿はまさにマイク・タイソン。得意パンチは左ボディーと右アッパー。ボディーショットで悶絶KO勝ちがお決まりパターン。
注目ポイント
デレフヤンチェンコの戦績は15勝(10KO)5敗と至って平凡。だが敗れた相手はみな世界王者であり、内容はどれも接戦。なんならゴロフキン戦は勝ってたのでは?という疑惑の判定だった。
一方でエンビリは強敵との対戦歴がなく、今回の一戦で真の実力が分かる。粗さと脆さを見せ「なんだこんなもんか」となるのか、完膚なきまでに殴り倒し「やっぱり化け物か」となるのか見ものだ。
個人的には今回も噛ませ犬扱いにされたデレフヤンチェンコの意地の勝利が見たい。
試合解説
1R
まずはエンビリがプレッシャーをかける。デレフヤンチェンコはサイドに流れたりとフットワークを使う。
強烈なボディージャブ・右ストレートを中心に手数を出すエンビリだが、動き続けるデレフヤンチェンコを捕まえれない。
終了間際エンビリの右ストレートがデレフヤンチェンコの顎を捉える!デレフヤンチェンコは効いてないよと言わんばかりに打ち返す。
10-9エンビリ
2R
1発の強さは明らかにエンビリだが、デレフヤンチェンコはジャブ・右アッパーとコツコツ当てる。
エンビリの強烈な右オーバーハンドがかすめる!まともに貰ったらヤバい。。。
デレフヤンチェンコがコーナーに追い詰められる。するとエンビリの右フックがデレフヤンチェンコのテンプルにヒット!追撃の左ボディーフックもヒット!
仕留めにかかるエンビリだが、ここは上手く凌がれる。
デレフヤンチェンコのワンツー打ち終わりに、エンビリの左フックがヒット。エンビリの有効打が目立ってきた。
10-9エンビリ
3R
ボディー攻撃を主体に攻め込むエンビリ。クリンチが増えてきたデレフヤンチェンコ。
エンビリの右フックがまたしてもテンプルにヒット!デレフヤンチェンコは右アッパーを返す。
接近戦で打ち合う両者。エンビリの右ボディーフックがヒット。
デレフヤンチェンコも右ボディーフック・右アッパーとヒットを重ねるが、パンチは軽いか。
終了間際デレフヤンチェンコの左フックがヒット。荒々しく打ち返すエンビリだが、ここは精度に欠ける。
10-9エンビリ
4R
主導権は完全にエンビリ。なんとか打開策が欲しいデレフヤンチェンコ。
左右のボディーフックを囮に右ストレートをヒットさせるエンビリ。
接近戦で右ボディーフックを立て続けにヒットさせるデレフヤンチェンコ。だがエンビリも右ストレート・左フックと当て返す。
おや?エンビリ疲れてきたか。動きが重くなった。
デレフヤンチェンコのノーモーションの右がヒット!だが負けじとエンビリも左ボディーフック・打ちおろしの右をヒットさせる!
10-9エンビリ
このラウンド疲れが見えたエンビリ。次のラウンドからデレフヤンチェンコの巻き返しあるか。
5R
派手なパンチはないが、ジャブを主体にコツコツ打ち込むデレフヤンチェンコ。
少し休んだエンビリはスイッチを入れ直し、強烈なコンビネーションを上下に打ち込む。右アッパーがヒット!
後半も絶え間なく強烈なボディーショットを浴びせたエンビリ。デレフヤンチェンコの打たれ強さも大したもんだが。
10-9エンビリ
6R
左ボディーフック・ボディージャブ・ボディーストレートとボディーを削るエンビリ。さすがに効いた素ぶりを見せるデレフヤンチェンコ。
今度は左右の高速フックをヒットさせるエンビリ。個人的にエンビリのパワーは想定内だったが、ハンドスピードと回転の速さに驚いている。
疲労の蓄積か、よろけるデレフヤンチェンコ。エンビリはそこを見逃さず右フックを立て続けにヒット!
なんとか持ち堪え打ち返すデレフヤンチェンコだが、パンチに力が乗ってない。
10-9エンビリ
7R
おっ。デレフヤンチェンコがサウスポーにスイッチ。
エンビリはお構いなしに距離を詰め、右フック・左ボディーをヒット。
ところが打ち下ろしの右を大きく空振りしたエンビリに、デレフヤンチェンコがカウンター右ボディーを合わせる!
バランスを崩すエンビリ。残りの力を振り絞り、猛ラッシュを浴びせるデレフヤンチェンコ!
防戦一方になるエンビリ。だがデレフヤンチェンコが打ち疲れ、事なきを得る。
そしてエンビリは反撃開始。ロープに追い込み左ボディー・左フックをヒット。
終了間際にも右ストレート・打ち下ろしの右をヒットさせたエンビリ。
デレフヤンチェンコは大きな見せ場を作ったが、結局エンビリの猛反撃を受けてラウンドを終えた。10-9エンビリ
8R
デレフヤンチェンコがスリップ。しんどいか。
両者接近し打ち合う。だがロープに押し込まれるデレフヤンチェンコ。エンビリの左フック・右ストレートのコンビネーションがヒット!
手数が全く出なくなったデレフヤンチェンコに、エンビリは強烈なボディーストレートを浴びせる!さらに左右のボディーフック・右オーバーハンドをヒット!
やりたい放題のエンビリ。コンビネーションも多彩で意外に技巧派。
デレフヤンチェンコのダメージが心配。もう棄権してほしい。10-9エンビリ
9R
判定勝ちを確信してるためか、無理には倒しにいかないエンビリ。休む時は休んで、攻める時は強烈なコンビネーションを打ち込む。メリハリがあり、試合運びが上手い。
終了間際にエンビリの左フックを貰ったデレフヤンチェンコは足を使って逃げるのが精一杯だった。
10-9エンビリ
10R
ファイナルラウンド。意地を見せるかデレフヤンチェンコ。
早速エンビリは右ボディー・右ストレート・左ボディーフック・右フックと変幻自在なコンビネーションをヒット!
さらにエンビリは左フックを顎にヒット!足がおぼつかないデレフヤンチェンコ。
またしてもエンビリは左ボディー・右アッパー・左ボディー・右ストレート・右ボディーと流れるようなコンビネーションをヒット!
コンビネーションの引き出しが多い。そして速い。
立ってるのがやっとなはずだが、最後まで打ち合い続けたデレフヤンチェンコ。あっぱれ。
10-9エンビリ
カズキ採点では、100–90でエンビリのフルマーク勝利
果たして結果は。。。
試合結果
ジャッジ1人目100-90、ジャッジ2人目99-91、ジャッジ3人目98-92
以上3ー0の判定で勝者、、、
クリスチャ〜ン・エンビリ〜!!!
感想
ゴロフキンやムンギアと激闘を繰り広げたデレフヤンチェンコが、ここまで一方的に負けるとは。。。
エンビリは強敵との対戦歴がなかったため、正直デレフヤンチェンコの勝ちあるなと思ってた。
ところがパワーだけでなく、ハンドスピード・回転力・コンビネーションの豊富さ・ディフェンス技術・試合運びの上手さなどあらゆる面でエンビリが上だった。
弱点はないと言っていいが、打たれ強さとスタミナが怪しいと感じた。今はまだカネロに勝てないかな。まずはムンギアやプラントあたりとの試合が観たい。
そしてデレフヤンチェンコだが、、、またしてもスター候補の踏み台にされてしまった。エンビリに勝ち、もう一度世界挑戦、悲願の世界王座獲得、そして引退と考えてたはずだ。
今回の敗戦で振り出しに戻ったため、年齢的にもモチベーション的にも引退だろう。あと一歩のところで世界王座を逃し続けた不運なボクサーとして、ボクシングファンの心に残り続けるだろう。お疲れ様でした。
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