2024年8月4日(日本時間)
WBA世界スーパーライト級(63.50キロ以下)タイトルマッチ
イサック・クルス(王者)VSホセ・バレンズエラ(同級5位)
開催地: ロサンゼルス
配信: DAZN (PPV)
ローランド・ロメロに見事8RTKO勝ちを収め、念願の世界王座を獲得したピットブルことイサック・クルス。
初防衛戦の相手はホセ・バレンズエラ。この選手なかなかの曲者。粗いスタイルで弱点は多いが、パンチの切れと当て感に優れ1発で形勢をひっくり返すことができる。
バレンズエラがアップセットを起こしても不思議ではない。
選手情報
イサック・クルス
生年月日: 1998年5月24日 (26歳)
国籍: メキシコ
異名: ピットブル
プロ戦績: 29戦26勝(18KO)2敗1分
身長163cm ・リーチ160cm ・オーソドックス
過去の対戦相手: ジャーボンテイ・デービス(⚫️判定0-3)、ユリオルキス・ガンボア(⚪️5RTKO)、ローランド・ロメロ(⚪️8RTKO)
ファイトスタイル
身長163cm、リーチ160cmということはフライ級ですか?いえいえ、スーパーライト級です。ボクシングに向いてない体格だが、クルスには関係ない。
鋭い踏み込みから、全体重が乗った強烈なフックを振り回してくる。追い足も速く、獲物は逃がさない。その姿はまさにピットブル。
ガードは鉄壁、それに加えて打たれ強い。パンチをもらってもびくともしない。相手からすると恐怖でしかない。
ホセ・バレンズエラ
生年月日: 1999年5月25日 (25歳)
国籍: アメリカ
プロ戦績: 15戦13勝(9KO)2敗
身長178cm ・リーチ178cm ・サウスポー
過去の対戦相手: フランシスコ・バルガス(⚪️1RKO)、エドウィン・デ・ロス・サントス(⚫️3RKO)、クリス・コルバート(①⚫️判定0-3 ②⚪️6RKO)
ファイトスタイル
オフェンスに能力を全振りしたようなボクサー。パンチの切れ・当て感・カウンターはセンス抜群。見えにくい角度から放つ左オーバーハンドは特に強烈。
コルバート第2戦では右ロングフックで失神KO勝ちを収め、見事リベンジを果たした。
ディフェンスは甘い。そして打たれ弱い。格上にアップセットが期待できる反面、格下に負ける姿も容易に想像できる。王者になっても長期政権は築けないだろう。
似たスタイルのボクサーを挙げるならルイス・ネリ。
注目ポイント
パワー・ディフェンス・打たれ強さはクルスが明らかに上。普通に考えればクルスがKOで勝つだろう。
クルスが苦手そうなのは、デカくてスピードがあってアウトボクシングができるデビン・ヘイニーのようなボクサー。
真っ向から打ち合っちゃうバレンズエラでは正直厳しい。だがバレンズエラにはアップセットを起こしてくれそうな魅力がある。非常に楽しみな一戦だ。
試合解説
1R
いつも通りガードを固めプレッシャーをかけるクルス。コーナーに詰めフックの連打を浴びせるが、バレンズエラはうまくエスケープ。
対するバレンズエラもクルスの左フックにカウンター右フックを合わせにかかるが、これは空を切る。
プレッシャーを受け下がりながらも、キレのある左ストレート、右フックを差し込むバレンズエラ。
ディフェンスも非常に集中しているバレンズエラ。調子が良さそう。コーナーに詰められてもL字ガードディフェンスで上手く対処。
バレンズエラのヒットアンドアウェイ戦法が上手くハマってる。スピードもバレンズエラが明らかに上。
バレンズエラこんなに技巧派だったけ?10-9バレンズエラ
2R
開始早々クルスの強烈な左フックがヒット!クルスはラッシュをかけるが、巧みなボディワークでこれ以上被弾を許さないバレンズエラ。ダメージもなさそう。
その後はインファイトに持ち込みたいクルスとアウトボクシングを展開するバレンズエラで噛み合わない展開が続く。
明確な有効打があったのはクルス。10-9クルス
3R
接近距離から切れ味抜群の左ストレート、左アッパーを放つバレンズエラ。だがクルスのガードは堅い。
クルスのプレッシャーを上手く捌くバレンズエラ。もともとだがクルスは攻めのバリュエーションが少ない。
クルスの左フックがバレンズエラの側頭部にヒット。ダメージはなさそう。
軽めのジャブを囮に左ボディーアッパーをヒットさせるバレンズエラ。そしてバレンズエラは距離を取りながらジャブでコントロール。
バレンズエラがここまでアウトボックスできるとは知らなかった。10-9バレンズエラ
4R
遠い距離からバレンズエラの左ボディーストレートがヒット。バレンズエラのパンチは切れ味があり見栄えがいい。
打っては下がるバレンズエラ。クルスがコーナーに詰める場面もあるが、バレンズエラは華麗なボディワークでかわす。
そしてバレンズエラはまたも遠い距離から左ボディーフックをヒット。もはやバレンズエラがレッスンしてるようだ。
左・右・左・右・左と流れるようなコンビネーションも見せるバレンズエラ。
10-9バレンズエラ
5R
クルスのパンチがことごとく届かない。クルスの踏み込み以上にバレンズエラのバックステップが速い。
攻防一体かつ多彩なコンビネーションを上下に打ち分けるバレンズエラ。気を抜かなければこのままバレンズエラの判定勝ちだろう。
10-9バレンズエラ
6R
フェイントと緩急をつけたステップから左フックを放つクルス、だがバレンズエラはダッキングで難なくかわす。
がむしゃらに攻めるクルスだが、ようやくカウンター右ストレートをヒット。
すると今度はバレンズエラがしゃがみながら右アッパーをクリーンヒット!
頑丈なクルスでもさすがに効いたはずだが、逆にラッシュをかけるクルス。効いてないアピールか。
終了間際にはクルスが踏み込んだタイミングに合わせて、左フックをヒットさせたバレンズエラ。
10-9バレンズエラ
7R
ヘイニーVSプログレイス戦ほどではないが、それに近いぐらいクルスの的中率が悪い。
ただテオフィモ・ロペスVSジャーメイン・オルティス戦のようにオルティスがロペスを塩漬けにしたように見えても、蓋を開けてみたらロペスの判定勝ちということもあった。
バレンズエラも油断できない。
ひたすらプレッシャーをかけるクルス。だがバレンズエラは集中したディフェンスで被弾を許さない。
クルスが踏み込んだタイミングに合わせ、左アッパーをヒットさせるバレンズエラ。タイミングを完全に掴んでる。
終了間際の近距離での打ち合いもバレンズエラが回転力・精度で上回り、右フック・左アッパー・左ストレートとヒットを重ねた。
10-9バレンズエラ
8R
ラウンド中盤、またしてもクルスの踏み込みのタイミングに合わせ、左アッパーをヒットさせるバレンズエラ。
両者の距離が近くなり、打ち合いが激しくなる。クルスの大振りフックも当たり出してきた。
バレンズエラも負けじとノーモーションの左ストレートをヒット。
クルスが変則的なステップから強打を振るうが、バレンズエラは難なくかわす。
難しいラウンド。手数・積極性はクルスだが、明確な有効打はバレンズエラ。10-9バレンズエラ
9R
まず積極的に手数を出すバレンズエラ。するとクルスが左右のボディーフックから左フックをバレンズエラの顔面にヒット!
ダメージは大丈夫そうだが、無理に打ち合わず距離を取るバレンズエラ。
再び距離が縮まるが、シャープなワンツーを上下に打ち込むバレンズエラ。クルスの荒々しい連打も華麗にかわす。
ここでクルスが強烈なローブローを浴びせてしまう。これは良くない。バレンズエラは苦悶の表情。一旦試合が止まる。
リスタート。終了間際バレンズエラが見栄えのいい高速コンビネーションを浴びせた。
ラウンド全体の印象を考慮すると、10-9バレンズエラ
10R
前に出続けるクルスだが、ことごとくパンチは空を切る。さすがに疲れが見える。
クルスが打ち疲れたのを見て、バレンズエラは手数を増やす。流れの中で左ボディーストレートを着実にヒット。
立ち回りも老獪。10-9バレンズエラ
11R
逆転KOするならここしかないと言わんばかりに、強打を振るうクルス。バレンズエラは冷静にクリンチ。
バレンズエラは足を使いながら、左アッパー、左ボディーストレートと要所要所ヒットを重ねポイントを取る。
バレンズエラの左アッパー・左フック・右フックのコンビネーションがヒット。クルスも反撃するが、バレンズエラはL字ガードと巧みなボディワークで被弾を許さない。
終了間際にクルスは猛ラッシュをかけるが、精度に欠けクリンチで凌がれる。
10-9バレンズエラ
12R
ファイナルラウンド
クルスはいきなり猛ラッシュをかけ、右ボディーストレートをヒットさせる。
クルスは少し休んだ後、またしても右ボディーストレートをヒット。バレンズエラはクリンチ。
下がるバレンズエラにクルスの右ストレートが顔面にヒット。クルスの闘志は死んでない。
バレンズエラも負けじと左ボディー、左ストレート、右アッパーとヒットさせるが、クルスは前進を止めない。
終了ゴング前にも打ち合った両者。試合終了。10-9クルス
カズキ採点では、118ー110でバレンズエラの大差判定勝ち。
果たして結果は。。。
試合結果
判定が割れたようだ!へっ!?
ジャッジ1人目116ー112バレンズエラ、2人目115ー113クルス、3人目116ー112・・・
and NEW!!!!
WBA世界スーパーライト級新チャンピオン!!ホセ・バレンズエラ!!
歓喜に沸くバレンズエラ陣営。会場も大盛り上がり。バレンズエラは初の世界王座獲得。
さすがにバレンズエラの勝ちで間違いないだろう。判定が割れたのもなんかな。。。
感想
いや〜、クルスはヘイニーのようなサイズがあるアウトボクサーには厳しいと思ってたが、、、
まさかバレンズエラに塩漬けにされるとは。。。予想外
ただバレンズエラの出来は本当に素晴らしかった。クルス対策がバッチリだったし、ディフェンスとアウトボクシングの技術に驚かされた。
現在スーパーライト級は最もハイレベルな階級だ。王座がコロコロ入れ替わり、誰も長期政権を築けてない。
バレンズエラが長期政権を築けるタイプだとは思えないが、クルスに完勝した事実からして穴王者とは言えない。
バレンズエラの次の対戦相手は「バロッソVS平岡アンディ」の勝者とだ。「バロッソVS平岡アンディ」の試合も当ブログで特集するので、みなさんぜひチェックして頂きたい。
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